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2007年05月14日

藍が島殺人旅情「祐子の発見」その2

  「祐子の発見」その1はこちら

 

 祐子の発見 その2

 

 夕方から再度聞き込みに出ていた平井と糸川が帰って来たのは夜の10時頃だった。

  五郎から情報を得た女を探しに行っていたのだ。

  赤津は、

  「どうだった。何か分かったか?」

  と、平井達に聞いた。

  平井が、苦悩した顔で、

  「警部、それがですねー、おかしいんですよ」

  どれだけ探してもそんな女が浮かび上がらないのだと言う。

  糸川が口をはさみ、

  「五郎が見たという女は、姿格好からして、 定期船で来たものだと言っていました。島にはあんな綺麗な女はいないからつい見惚れてしまった。といっていましたから」

  「それが、不思議なんですが、 島中の民宿を五郎を連れて歩きましたが、該当する女は見当りません。それに、どうしても女は5人しか見当らないのです」

  と、付け加えた。

  赤津は、そうかご苦労さん、 と言って今日は休むように指示した。

  翌日、東京の捜査本部に連絡したが、田中は、 捜査に進捗は見られないという気のない返事が返ってきた。

  赤津たちも24日に藍が島に上陸した人全員に協力して貰い、住所と名前を聞いて一度東京に帰ることにした。

  若い刑事の平井から、犯人を逃がすことになる。 と反発されたが、

  「犯人は何処へも逃がさないよ」

  と、自信に満ちた言葉を発した。

  吉住達も東京へ帰ることにした。 テレビクルーの佐々木があんなことになっては、撮影どころではない。

たまたま、今日は海が凪いだので定期船が出るという。八丈島へ渡り空路で羽田へ飛ぶことにした。

好奇心が強い祐子は、色々な推理を立てていた。旅行にはいつも推理小説をバッグに入れている。

「ねえねえ。あなた。今回の事件だけどね。私いろいろと考えてみたのよ。犯人はさー。 ずーと私たちと同じ船に乗って来てチャンスを狙っていたんでしょ。ぞーとするわねー」

祐子は民宿の部屋隅で吉住に語り掛けた。

「今回来た人の中に犯人がいたとは限らないんじゃないのかしら。前もって藍が島に来ていたとか」

「前もって?」

「うん。そう。だって、そんなに沢山船に乗ってないんだから直ぐにばれちゃうんじゃないの? 現に刑事さんたちが必死に調べたけど犯人がわからないのでしょ。」

「それと、ちょっと気になることがあるのよ。刑事さんが言ってたけど、 五郎って人が怪しい人影見たらしいって言ってたでしょ。実は私もチラッっと見たけど、ひょっとしてあの人は男で、 女装してたんじゃないかな?ってね」

「女装?なんで?」

吉住は祐子の話を半分上の空で聞いていた。佐々木の死によって今回の取材はボツになってしまい何か気が抜けていた。 祐子の女装という言葉に少し耳を傾けた。

「女装して佐々木が来たことを確認しに港に来ていたのよ。だって、 佐々木が知ってる人なんだから見つかったらやばいでしょ」

「うーん。なるほど。」

「でも。いつ来て何をしてたのだろう。その男」

「藍が島には工事の人が沢山きてるじゃない。その工事の人になりすましていたっていうのはどう?」

「うーん考えられなくない話だな。でもあくまで感だろ?おまえの」

「そうだけど、案外当たるのよ妖怪の感は。ふふふ」

おどけて見せた笑顔が吉住は好きだった。自分を妖怪といって笑わせるが、本当にそうかも知れないと思う節もある。

翌日、東京の捜査本部で、会議が持たれた。

  「今度の事件を最初から整理してみます」

  赤津はそう言って黒板に名前を書き出した。

  佐々木    ・・・害者(カメラマン)

  久保まゆみ・・・ 害者の彼女

  吉住      ・・ ・釣り人

  中村      ・・ ・釣り人

  太田      ・・ ・ディレクター

  山田      ・・ ・カメラマン

  五郎が見た女  ・・・?

  五郎          ・・・島の住人

  そこまで書いて、

  「この他にも24日に藍島に上陸した者が12人います。 男が7人、女が5人です。よって、佐々木を除く黒板の5人を含むと、男が11人と女が6人の合計17人です。 うちカップルが3組です。つまり、男8人と女3人、そして、3組のカップルとなります」  と、説明した。

  続けて、この者達のアリバイだが、と、 平井の方を見て促すと、平井が説明し始めた。  「すべての人のアリバイが成立します。今回、 佐々木と同行した釣り人たちも太田というディレクターを除く3人は釣りに出かけ、島の住人数人が、 その時間は反対側の三宝港で釣りとカメラを回しているのを見ています。太田は民宿にいるのを民宿の主人が確認しています。」

  「吉住の女房はぶらぶらと島内を散策していたらしいが、 佐々木の死亡時刻の午後3~4時には民宿に戻っています。勿論、島の住人にも佐々木を殺すチャンスはあったでしょうが、 その動機や全員のアリバイを取るのは現時点で無理です」

  と、続けた。

  赤津が、

  「それより、問題は佐々木が生前に彼女に言った、 『もう直ぐ大金が入る』というのが気になる」

  ことを強調した。

  「佐々木は誰かを強請(ゆす) っていたのでしょうかねー」

  若い斎藤という刑事が質問した。

  エリート刑事の田中が、 直ぐに反応して

  「そうに決まってます。 その線を今洗っているところです」

  「その久保という女は、 佐々木が何か人の弱みを握っていたようなことを言わなかったかね」

  と、赤津が田中に聞いた。

  「特に聞いていないといっていましたが・・・」

  と、答えたが

  「もう一度強く聞いてみます」

  と、自信のない声で言った。

  「例えば、佐々木は誰かの弱みを握っていた。 そして強請っていたとして、どうしてあんな離島まで行って殺す必要があったかですよ」

  若い刑事の糸川が、そんな素朴な疑問を口にした。

  「そうなんだよ、 それさえ分かればこの事件は急速に解決に向かうのではないか。と思っている」

  それと、もう直ぐ新しい事実が分かる。 と皆に自信満々に言った。

  実は、赤津は藍島から戻るときに、 もう一人のカメラマンの山田に、さりげなく風景を撮影する振りをして、定期船に乗る人を全員撮影してくれないか。 と頼んであったのだ。

  翌日、カメラマンの山田から電話があった。 旅と釣りの事務所は大田区の雑貨ビルの二階にあった。山田の説明が良かったのか、運転手の平井の土地勘がいいのか、 そのビルは直ぐ分かった。

  「うまく撮影したよ」

  と、山田は自慢そうに言ってテープを渡してくれた。 そして、参考にと定期船が藍島に到着した時に佐々木が撮影したテープもダビングして渡してくれた。

  赤津と平井は、丁寧に礼を行って別れた。

  早速映写会が開かれた。

  最初に佐々木が撮影した藍が島までの分を見た。

八丈島の空港を出発した時の風景から始まり、定期船の還民丸に釣り人が乗り込む風景が映っていた。 その続きに翌週の還民丸に八丈島から乗客が乗る姿が映っている。一人一人大きくクローズアップされている。 かなりの望遠で撮ったようだ。風でカメラがふらつくのか、時折少し揺れる。そして、今度は八丈島へ到着する還民丸が映った。 そこから降りてくる乗客が同じようにクローズアップされた。

藍が島行きに乗ってなくて、帰りに乗ってきたものばかりを探すんだよ。その中に犯人がいるってことさ。 まあ調べればわかるさと自信満々に言った。

赤津の推理はこうだ。犯人は佐々木が死んだ前日に藍が島へ入港した船ではなく、その数日前の船で藍が島へ入っていた。 もしかしたらヘリコプターで来ていたかもしれない。そして、佐々木を殺すチャンスを伺っていた。 おそらく工事の者かなんかになりすまして民宿に泊まっていたと思う。そして、4月27日の八丈行きには乗っていない。 警察が調べているからね。その次の便かヘリコプターで島を離れるはずだ。

電話で定期船還民丸の事務所に問い合せると、島の住人はパスを持っていて、切符は買わない様だ。 4月27日の八丈島行の還民丸には4月20日に藍が島行きに乗った吉住たちと工事関係者3人と島民2名。 全ての者の素性は分かっている。工事関係者と島民も確認された。問題は、 4月28日に藍が島行に乗ったものと帰りの八丈島行きに乗った乗客の違い。そして、 4月20日以降にヘリコプターで島を脱出した者がいるかどうかだ。

それらを調べようということだ。

ヘリコプターは悪天候でほとんど飛べず。1日だけ4月30日に飛んだが、 役場のものと工事関係者という裏が取れている。

念のためテープをダビングして、藍が島の役場に送って返事を待とう。と言い、頭の中で整理した。

  島の男、五郎が見た女というのは、 実は男だったのではないか。という推理である。

  「つまり、こうだ」

  と、赤津は自分の推理を皆に説明した。

  「佐々木は、ある男の弱みを掴んだ。例えば、 スキャンダルとしよう。殺人現場を見たかもしれない。そして、強請っていた。強請られた男は、 なんとかして佐々木を殺そうとした。そのチャンスがこの藍が島でやってきた。という訳だ。 その男も顔を見られるとやばいと思ったのだろう。佐々木だけでなく、他のものにもね。だから女装して近付いた。」

  女装したのでは? というヒントは祐子から得たものだったが、それは言わなかった。赤津にもプライドがあったからだろう。

なるほど、と若い平井が呟き、

  「では、どうやって佐々木を殺したのでしょう」

  と、赤津に聞いた。

  「その女、いや女に変装した男は、 民宿はまゆうの車が迎えに来たことを確認した。そして、様子をうかがっていると運良く佐々木が一人で出かけた」

赤津が推理を続けた。

「そんな運良く。それも危険な崖に行きますかねー」

若い糸川刑事が質問した。

「それより、佐々木はどんな弱みを握っていたかだ。その疑問が解決しないとこの捜査は行き詰まる」

と赤津は言った。

「あの、もしかして」

  と、若い糸川が喋った。

  皆が糸川の方を見た。 糸川は少し恥ずかしそうな仕草をして、

  「佐々木はカメラマンですよねー、 釣り風景か何かを映している時に偶然何かを撮ってしまった。とか、あのテレビ用のカメラは1千万円近くするらしいですよ。 かなり望遠も効く。100mや200m離れていても人の顔がはっきり映っているのではないでしょうか。」

と付け加えた。

「でも、過去の話ならテープを取り返さないと意味が無いんじゃ。まあ調べてみよう」

赤津はそう言って上を向いて考えるしぐさをし、 若い糸川と佐藤に佐々木の彼女や佐々木の会社のものに探りを入れるように指示した



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投稿者 ootani : 2007年05月14日 22:04

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